関係性と芸術の実践
スクール溶け合うアイデンティティと見知らぬ私
8月18日(日)14:00 - 16:00
講師:百瀬文
他者に出会うことで意識される〈私〉というアイデンティティーとはどのようなものかについて考えます。〈私〉とは一本の木のように根が生えて空に向かって大きく育ってゆくのではなく、他者と出会うことで形を変えながら絶えず生まれ変わっているものだとしたら、そこにはどのような創造性が潜んでいるでしょうか。講師が手がけた《クローラー》や遠藤麻衣との共作《Love Condition》などに触れながら、その謎に迫ります。
なぜ、いま、東京藝大でヤギなのか
10月19日(土)16:00 - 18:00
講師:小沢剛
東京芸術大学取手キャンパスで展開する「ヤギの目で社会を見るためのプロジェクト」について考察します。2020年12月に2頭のヤギがやってきてから、小屋づくりや飼育環境の整備から、それらに連なる活動が少しずつ動き出しています。この教員や学生にとってコミュニケーションをとることもままならない生き物がもたらす変化とはなにか、そしてそれがアートの教育・制作現場へどう影響するのか。ヤギと人間をめぐるアートの実験の行方を追います。
アートにおける関係性を再考する
11月9日(土)16:00 - 18:00
講師:小澤慶介
ニコラ・ブリオーが『関係性の美学』を書いてから30年近く経った今、人・モノ・場をめぐるアートの実践は、どのように変化してきているのかを追います。ブリオーはもちろん、ブリオーに反論したクレア・ビショップや人類学の領域からそうしたアートに影響力を与えているティム・インゴルドなどの考えにも触れ、リクリット・ティラバーニャから志賀理江子までの芸術的実践と関係性をめぐるアートの質について考えます。
アナ・メンディエタのエコノミー
12月1日(日)14:00 - 16:00
講師:沢山遼
今年、 DIC川村記念美術館では、アメリカの彫刻家カール・アンドレの個展が開催されました。アンドレは、キューバ出身のアーティスト、アナ・メンディエタと婚姻関係にありました。しかし、1985年にメンディエタは、アンドレとの口論の最中、二人が生活していたニューヨークのアパートから転落死します。そのキャリアは、永遠に断たれることになりました。その後、現在に至るまで、この重要なアーティストの仕事が十分な検証の対象となってきたとは言い難い状況が続いています。 メンディエタはキューバ革命後、12歳のときに姉とともにアメリカに亡命します。彼女はその後、アメリカで、ボディアートやパフォーマンス、フェミニズム、アースワークなどの複数の動向と交差する特異な活動を展開しました。 代表作となる「シルエッタ」のシリーズでは、作家の身体と大地とが一体化するようにも見える、身体の痕跡やシルエットによる(主に写真記録による)仕事を展開します。作家の身体を強く現前させると同時に、そこから痕跡だけを残し身体が消滅したようにも見える「シルエッタ」シリーズは、メンディエタの仕事の二重性が端的に示されています。 メンディエタの仕事から確認することができるのは、大地と身体、男性と女性などといった異なる二極的な価値の交換や物質代謝のプロセスです。このレクチャーでは、いまだ十分な論究の対象となっていないメンディエタ批評を補完すべく、その仕事を、メンディエタが追究した、経済的・物質的な交換のエコノミーのなかに探ります。