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リーディング 関係性をめぐるアートの30年(Re R)

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関係性をめぐるアートの30年(Re R) 定員10名 全6回

2024年9月〜11月 水曜日19:15〜21:15

1990年代から現在までの、人・モノ・場をめぐる関係をモチーフにした芸術実践を追います。アートからはじまった議論も、今では人類学の領域へと広がっています。ニコラ・ブリオーをはじめティム・インゴルドなどのテキストにも触れ、関係性をめぐる芸術実践の変容と可能性について考えます。前半を小澤慶介、後半を兼松芽永が担当します。

 

関係性の美学とアートの実践

9月18日(水)19:15 - 21:15

講師:小澤慶介


ニコラ・ブリオーが書いた『関係性の美学』を紐解きながら、1990年代の芸術的実践とその同時代性について考えます。モノと人と場の関係がアートとして評価されるとき、それはどのような議論に裏付けられているのでしょうか。アートの領域だけではなく資本主義や産業構造の変化などにも目を向けるブリオーの考えと作品を概観します。

社会空間の間隙に交歓を求めて

10月2日(水)19:15 - 21:15

講師:小澤慶介


社会空間におけるあらゆることが経済の論理で成り立っているように見える新自由主義の時代において、それへの抵抗や対抗はアートをとおして果たして実践することができるでしょうか。ブリオーが『関係性の美学』においてよく使う言葉−間隙と交歓−をキーワードに、イェンス・ハーニングやピエール・ユイグなどの実践に触れ、その可能性について議論します。

関係の詩学とアート

10月16日(水)19:15 - 21:15

講師:小澤慶介


ブリオーの『ラディカント』を読みながら、グローバリゼーションの時代における関係性をめぐるアートの実践について考えます。「根」(ラディカル/ラディカントの語源)や「クレオール」をキーワードに、複数の言語や文化が出逢いながら影響し合いその時々で形を変えてゆく状況、そして旅をするかのように移動しつづけるアーティストの実践は、この世界をどのようなものとして表すのでしょうか。

メッシュワーク「つくること」を考える 

10月30日(水)19:15 - 21:15

講師:兼松芽永


様々な生物やものと絡み合う人間の生のあり方を「流れ」や「運動」の一時的結びつきとして捉えるティム・インゴルドの文献『生きていること』を読みます。素材や道具・技術・火や風雨などが「もの」や「作品」としてかたちに成る過程の創造性に焦点をあてる議論から、改めて「つくること」とは何か、ディスッカッションしながら探究します。

多元的世界の関係性とは? 

11月13日(水)19:15 - 21:15

講師:兼松芽永


科学人類学者のブルーノ・ラトゥールらは、「唯一の自然」と「複数の文化」という西洋の世界観は近代化の過程で作られたものであり、主体/客体、自己/他者、西洋/非西洋といった二元論から脱却すべきであると指摘しました。人間だけでなく、モノや機械・法・生物や精霊まで複数の種が複雑に関わりあいながらかたちづくる世界のとらえ方と、アートにおける関係性の議論の結びつきや違いについて考えを深めます。

実践からたどる生と関係のかたち

11月27日(水)19:15 - 21:15

講師:兼松芽永


多様な人や場、分野の協働に価値をおくアートの前提には、公/私や集団/個人などの社会的な枠組みがあります。しかし身体に基づく「個」であっても、父親/がん患者/被災者など状況や社会的文脈に応じて複数の「個人化」と「集団化」が重なり合い、調整されつつ存在しているといってもいいでしょう。「個」と異なる人間像を示すアマネリー・モルの『ケアのロジック』を読みながら、個的/局所的なものごとや生をひらく試みとしてのアートについて議論します。