美術館のはじまり、芸術のはじまり
6月6日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
18世紀から19世紀にかけての近代国家の成立とともに生まれた美術館を軸に芸術について考えはじめます。フランス革命後の1893年に開館したルーヴル美術館から、1929年に開館しホワイトキューブの先駆けとなったニューヨーク近代美術館を経て、20世紀末のグローバリゼーションの時代において観光産業と深く結びついて開館したビルバオ・グッゲンハイム美術館などに触れながら、美術館と芸術の関係、そしてその移り変わりについて概観します。
近代社会の到来と自律する芸術
6月20日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
19世紀フランスのギュスターヴ・クールベやエドゥアール・マネ、また20世紀のマルセル・デュシャンなどの芸術実践をとおして、アートを支える思考や態度、運動について理解を深めます。クールベやマネは絵画をどのようにとらえ変革していったのでしょうか。また、デュシャンは既製品を取り入れながらアート自体をどのように転回していったのでしょうか。断絶と乗り越えをキーワードに自律的に運動をしてゆく近代の芸術について考えます。
芸術とリアリズム ロマン主義から抽象表現主義へ
7月4日(土)13:00 – 15:00
沢山遼
リアリズムをキーワードに19世紀前半から20世紀中ごろにかけての芸術家の問題意識と表現を読み解きます。近代化を遂げる社会において、また写真術の到来などによって、絵画は具象的な表現から幾何学的な抽象的なものへと変わってゆきました。ギュスターヴ・クールベやピエト・モンドリアン、ジャクソン・ポロック、バーネット・ニューマンといった芸術家たちがとらえようとした「リアル」と時代の関係とは?
理性の外へ−ダダ、シュルレアリスムの芸術
7月18日(土)13:00 – 15:00
沢山遼
第一次世界大戦期にスイスのチューリヒではじまったダダイズムと二つの世界大戦の間ではじまったシュルレアリスムは、いずれも詩人によって導かれ、それまでの芸術の枠組みを超えてゆくような活動をしました。人間が理性的な生き物ではないことが明らかになったとき、フーゴ・バルやトリスタン・ツァラ、またアンドレ・ブルトンたちはどう時代に向き合いなにをとらえようとしたのでしょうか。
古いヨーロッパから新しいアメリカへ移る前衛芸術
8月1日(土)13:00 – 15:00
沢山遼
芸術の中心がヨーロッパからアメリカへと移った時期の前衛芸術の足跡を追います。二つの世界大戦の戦間期にドイツのヴァイマールに開設された芸術学校バウハウスで教鞭をとっていたヨゼフ・アルバースやラースロー・モホリ=ナジは、やがてアメリカに渡りノースカロライナ州のブラックマウンテン・カレッジで新たに教えはじめました。アートだけではなく、ダンスや音楽、建築などの領域を行き来しながら、ロバート・ラウシェンバーグなどの芸術家を生んだ革新的な芸術運動について考えます。
複製技術時代の到来と変容する芸術
8月22日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
19世紀前半のフランスと英国で発明された写真術は、芸術のみならず人間による世界の認識のしかたに影響を与えました。ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンは、同じイメージが何枚も複製されそれらが世界中に流通する時代の到来により、芸術は政治的なものになったと述べます。大量のイメージが世界をつくり出す時代において、では芸術としての写真はどのようなものとして成立するのでしょうか。20世紀はじめのウジェーヌ・アジェなどからはじめ、トーマス・ルフやトーマス・デマンド、畠山直哉といった現代の写真家の作品をとおして考察します。
20世紀の映像文化とスペクタクルの社会
9月5日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
19世紀末にエジソンとリュミエール兄弟が発明した映像の技術によって、社会と芸術はどのように変わっていったのかを追います。20世紀に入り、映像はフィルムなどの素材や撮影技術を駆使することで実験的な作品を生み出した一方、戦争期にはプロパガンダにも使われました。戦後、映像を含むイメージによって大衆の心理が支配される社会状況が明らかになったとき、アーティストたちはどのような映像でそれに対抗していったのでしょうか。マーシャル・マクルーハンの考えやナム・ジュン・パイク、ヴィト・アコンチなど1960年代の芸術実践から考えはじめます。
フォーラム1
9月19日(土)16:00 – 18:00
小澤慶介
前半のレクチャーで触れたアーティストや作品、芸術運動、社会背景などについてディスカッションをしながら振り返りをします。近代社会の到来によって芸術はどのようなものになったのか、そしてそれが20世紀に入ってどう拡張また変容したのかを確認します。
彫刻からインスタレーションへ
10月3日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
場所や台座との関係で考えられていた彫刻が、それらから解き放たれさまざまな社会空間で展開していった流れを概観します。パブロ・ピカソやアンリ・マティスの彫刻をはじめ、戦後のロバート・スミッソンやリチャード・ロングなどによるアース・ワーク、またトマス・ヒルシュホルンやレイチェル・ホワイトリードなどの地域社会の政治・文化的な状況を取り入れた作品などに触れながら、作品を社会空間との関係で読み解きます。
パフォーマンスがアートになるとき
10月17日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
身体的な表現や行為がアートとして成立する条件や状況があるとしたら、それはどのようなものになるでしょうか。第一次世界大戦期に中立国のスイスで展開したダダイズムからはじめ、戦争の記憶が残るなかで物質を消滅させようとしたグスタフ・メッツガー、また表現の自由が制限される社会体制においてそれでも自らの体を使って表現を追い求めようとしたミラン・クニージャークなどの作品行為をとおして、パフォーマンスを身体の表現としてだけでなく、身体と社会空間の関係からも考察します。
表現の自由を追い求めて 戦後日本の前衛芸術
10月31日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
日中戦争や太平洋戦争前夜から高度経済成長期までの日本の前衛芸術の流れを概観します。戦時体制下の表現の自由を奪われた時代を経て、前衛芸術は戦後どのように展開していったのでしょうか。新しい技術を取り入れながら表現の可能性をさぐった実験工房や海外にも活動を伝えながらその特異性を追求した具体美術協会、そして無鑑査ゆえに多種多様な芸術的実践が行われた読売アンデパンダン展などを紐解きながら、戦争の記憶をとどめつつ同時代のうねりのなかでさまざまに変容していった芸術について理解を深めます。
絵画の地殻変動−2000年代の「仮設的」絵画を起点に
11月7日(土)13:00 – 15:00
桝田倫広
写真や映像、インスタレーションとアートの形式が多様化する状況における絵画の一つの傾向について考えます。2009年にラファエル・ルビンスタインによって書かれたエッセイ「仮設的な絵画」。それは、モダニズムの美学に照らせば未完成や失敗作のように見える絵画のあり方を指しますが、こうした作品が取り上げられるようになった背景にはどのような思考や態度、戦略があるのでしょうか。日本の2000年代の絵画の動向「マイクロポップ」にも触れながら、21世紀における絵画のあり方について考えを深めます。
1990年代のアート−西洋的なものへの疑いと関係性の美学
11月21日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
近代社会の価値観が綻びはじめた1990年代のアートについて概観します。モダニズム – ポスト・モダニズムの議論を触れながら、近代を支えてきた考えや構えに対する批判的な表象を追います。YBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)のダミアン・ハーストやサラ・ルーカス、またニコラ・ブリオーの著作『関係性の美学』で取り上げられたリクリット・ティラバーニャやイェンス・ハーニングなどは、グローバリゼーションの到来で現れた政治・文化的な状況をどうとらえ表現に展開したのでしょうか。
グローバリゼーションと多文化主義の時代
12月5日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
1990年代に唱えられた多文化主義の光と影について考察します。グローバリゼーションによって言語や人、文化は世界規模で混ざり合い、多文化主義の旗印のもとさまざまな文化的背景をもつアートが取り上げられるようになったとき、どのような課題が浮かび上がり議論されていったのでしょうか。1989年の「大地の魔術師たち」展から2002年のドクメンタ11の間のいくつかの展覧会に触れながら、西洋から見た「他者」の芸術実践から非対称な世界をとらえます。
国境を越えるアーティストと絵画の現在地
12月19日(土)13:00 – 15:00
桝田倫広
数世代にわたって移民のアーティストが活動する英国の戦後の美術史の一端を紐解きながら、国と国また文化と文化の間を主題化した絵画表現について考察します。英国へ渡り、モダニズムへの同化をさぐった移民の第一世代を経て、第二世代はみずからの出自と英国の文化の間で揺れるアイデンティティをさぐる表現へと移ってゆきました。そして現在は第三世代になってきています。ルバイナ・ヒミッドやソニア・ボイスをはじめ、リネット・イアドム=ボアキエなどの作品をとおして、越境するアーティストと絵画の変容を追います。
新自由主義の波と二極化する2010年代のアート
2027年1月9日(土)13:00 – 15:00
小澤慶介
個人が利潤を追求する新自由主義において、富裕層の資産としてマーケットで取引されるアートを生む一方で、マーケットの開放や土地の領有による戦争や紛争で難民や移民を生みつつそうした過酷な状況を表象するアートも生み出しています。それら二つの極は不可分であることを意識しつつ、アートマーケットの動き、またヴェネチア・ビエンナーレやドクメンタなどの国際展などに触れながら、2010年代の芸術実践について考えを深めます。
フォーラム2
2027年1月16日(土)16:00 – 18:00
小澤慶介
主に後半のレクチャーにおいて考察したアーティストや作品、芸術運動などについての振り返りをします。ディスカッションをしながら、特に1990年代以降の普遍的な思考や視点でとらえきれなくなった政治・文化的な状況におけるアートについて整理し、理解を深めます。