美術館が先か、アートが先か
6月3日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
美術館という制度があるからアートがあるのか、それともアートがあるから美術館ができたのか。この問いを考えるには近代社会の成立に目を向ける必要がありそうです。近代国家が形づくられる時に設立されたルーヴル美術館からはじまり、ホワイトキューブの先駆けとなったニューヨーク近代美術館などを経て、21世紀に入って新しく建てられたテートモダンや金沢21世紀美術館などに触れながら、美術館とアートの切っても切れない関係について考えを深めます。
近代社会の誕生と自律する芸術
6月17日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
現代アートはいつはじまったのか、という問いに向きあうために、19世紀前半のフランスにおける芸術から考えはじめます。クールベやマネはそれまでの絵画をどのように変えたのか、また20世紀に入ってデュシャンは芸術そのものをどのように変えたのか。同時代との関係にも目を配りしつつ、破壊と乗り越えをキーワードに、芸術が進化してゆく足どりを追います。
絵画のリアルを求めて ロマン主義から抽象表現主義へ
7月1日(土)13:00 - 15:00
講師:沢山遼
絵画はいつもリアルである。このことを踏まえながら、19世紀フランスのドラクロワやクールベから第一次世界大戦までの抽象絵画の流れを読み解きます。リアルというと、目のまえのモノや風景を写実的に描くことを想像しますが、そうではなく、ここでは近代社会の形成にともなって劇的に変わってゆく生活文化や時代の気分に鋭く反応することを意味します。都市の興隆や技術革新、戦争の時代における芸術家たちのリアルに迫ります。
写真は世界をどう変えた?
7月15日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
19世紀の前半にフランスと英国で発明された写真術は、それまでの芸術に影響を与えつつ、少しずつ芸術に組み入れられてきました。イメージは複製され、何枚も作られては拡散されることに、思想家ヴァルター・ベンヤミンは政治性を見出しましたが、写真術の到来によって人間の世界に対する認識のしかたはどのように変わったのでしょうか。芸術だけではなく、広告やジャーナリズム、プロパガンダなどにも目を配りながら考えます。
芸術の地殻変動 ダダ、シュルレアリスムから考える
7月29日(土)13:00 - 15:00
講師:沢山遼
第一次世界大戦の戦中・戦後に現れた芸術運動、ダダとシュルレアリスムについて考えます。近代社会の形成と大規模な産業化の果てで引き起こされた第一次世界大戦は、おびただしい数の人間が機械的に殺されるという凄惨かつ非理性的な出来事でした。そうした人間の影の部分が露わになったとき、芸術はどう変化したのでしょうか。バルやツァラ、アルプ、エルンストなどの作品に触れながら考えます。
ヨーロッパからアメリカへ渡る前衛芸術
8月5日(土)13:00 - 15:00
講師:沢山遼
二つの世界大戦の戦間期、フランスやドイツで活動していた芸術家は海を渡り、アメリカへ移ってゆきました。バウハウスで教鞭をとっていたアルバースやモホリ=ナジがノース・カロライナ州で開校したブラック・マウンテン・カレッジにおける活動、またそこに参加していたラウシェンバーグなどによるネオ・ダダをとおして、数々の実験が生み出す新しいアートの形について考えます。
スペクタクルの社会と映像文化
8月19日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
19世紀の終わりにエジソンやリュミエール兄弟によって発明された映像の技術は、芸術やエンターテイメントだけではなく、国家といった体制側にも受け入れられてゆきました。20世紀をとおしてイメージによって人々を支配してゆく傾向が強まってゆくなか、ドゥボールなどの思想家やパイクなどのアーティストはそれに関わりをもっていったのでしょうか。実験や抵抗などのキーワードで紐解きます。
フォーラム1
9月2日(土)16:00 - 18:00
講師:小澤慶介
受講生が考えたことや疑問に思ったことなども踏まえながら、前半のレクチャーを振り返ります。近代社会の到来や技術の発明によって芸術はどのように変わったのか。また二つの世界大戦は芸術にどのような影響を与えたのか。20世紀初頭までの流れを確認しつつ、戦後への準備をします。
「絵画」を脱する絵画へ
9月16日(土)13:00 - 15:00
講師:桝田倫広
絵画というメディアを疑い、相対的にとらえることで、その可能性を広げようとしたアーティストや作品について考えます。カンヴァスや木枠、絵の具による絵画を自明のこととせず、メディアの特質を見極めつつ他のメディアとの関係において成立する絵画的な表現とは、どのようなものとして現れるのでしょうか。ゲルハルト・リヒターやマルティン・キッペンベルガーなどの作品を参照にしながら、絵画の理解を更新するような制作行為についてさぐります。
彫刻からインスタレーションへ 空間論から芸術を読み解く
9月30日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
19世紀末のロダンを起点に彫刻の歴史を眺めてゆくと、次第に彫刻から台座が取り払われるとともに日常生活で使われているオブジェなどが組み合わさってくることに気づきます。それは、場にしばりつけられていた彫刻が、社会の空間との関係で変化していったととらえることもできそうです。ルフェーヴルなどの空間論をたよりに、彫刻からインスタレーションへの展開の道すじを検討します。
パフォーマンスがアートになるとき
10月14日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
自らの体を表現のメディアとしてとらえて展開するパフォーマンスアートの歩みを概観します。その動機は、絵画に至る過程での行為や一過性の出来事を示すジェスチャー、生き物としての人間の表象、権力への抵抗の場などアーティストと社会の関係によってさまざま。●●やマリーナ・アブラモビッチ、また2000年代のパフォーマンスなどにも触れながら身体の表現とその同時代性について考えます。
戦後日本の前衛芸術
10月28日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
新しい技術を取り入れた実験的な表現や既存の美術の枠組みから外れてゆくような表現を展開した、太平洋戦争後の前衛芸術の数々の運動について考えます。実験工房や具体美術協会、九州派、そしてそれらの活動が流れ込んで大きなうねりを形づくった読売アンデパンダン展などに触れながら、高度経済成長期の日本を表象するような芸術のかたちを考えます。
1990年代とアート 西洋中心主義への疑いと表現の多様化
11月11日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
1980年代の後半、東西のイデオロギーの対立が終わりを迎え、チェルノブイリ原発の事故が起こり、それまで多くの人々に信じられていた近代社会の神話が崩れはじめました。この、西洋の世界が内側から壊れはじめたとき、アートはそうした時代の雰囲気にどのように応答していったのでしょうか。マウリツィオ・カテランやYBA(Young British Artists)などの作品を参照しながら考えます。
グローバリゼーションと多文化主義の時代
12月2日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
1989年のベルリンの壁崩壊とともに資本主義が世界化してゆくなか、文化の領域では多文化主義が唱えられるようになりました。とはいえ西洋と旧植民地の関係において、文化的な格差が温存されていました。1989年にパリのポンピドゥーセンターほかで行われた大地の魔術師たち展を起点に、2002年のドクメンタ11、2008年の光州ビエンナーレなどに触れながら、文化的な格差は展覧会をとおしてどのように埋められていったのかについて考察します。
新自由主義の波と二極化するアート
12月16日(土)13:00 - 15:00
講師:小澤慶介
現代アートは、政治や経済の動きと無縁ではなく、むしろそれらとの影響関係で多様化するといってもいいでしょう。世界を包み込んだ新自由主義という名の資本主義は、一方で資産としてのアートに注目しアートマーケットを活性化しています。また一方では、紛争や戦争を巻き起こし、移民や難民を生み出しつづけています。アートはこうした世界にどのように向き合い、どこを切り取り何を表すのでしょうか。2000年代のヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタなどで取り上げられた作品やプロジェクトを参照しながら考えます。
フォーラム2
2024年1月13日(土)16:00 - 18:00
講師:小澤慶介
後半をとおして受講生が考えたことや疑問に思ったことを出し合い、20世紀後半から21世紀にかけてのアートの歩みを振り返ります。国家の再建、東西冷戦、グローバリゼーションを経てアートはどのように変化し、現在どのような課題が残されているのかを確認します。